越美線未成線の旅⑤(越前花堂→九頭竜湖/52.5㎞)

越美北線の乗り換え口と越前花堂駅

 12時54分の九頭竜湖行には僕含め3名の乗車があった。車内は16名だが、キハ120形はボックスが4席しかなく、ボックスには座れなかった。六条・足羽と駅周辺にはほとんど集落がない平野部を走り、旧東郷村の中心駅である越前東郷で4名折りてようやくボックスシートが確保できた。ほっとひと息ついたので持参のアルコールに手をつける。

第一足羽川橋りょうを渡り越美線の旅に乾杯

 越前東郷を過ぎると足羽川が左手に近づく。次の一乗谷でも5名が下車。やはり一乗谷朝倉遺跡へ向かうのだろう。県道からアクセスするにも細い道しかなく、ロータリーがないので大型車は進入できず、駅前が民家と農地で、まともな駐車もできない。一応周辺案内マップもあるが、パンフなどは置いてない。もう少し整備してレンタサイクルなどを置けば観光利用にも役立つはずなのにとても残念である。

越前大野駅にある安全の鐘

 一乗谷を過ぎると美山までに蛇行する足羽川を7回も渡る。途中徐行区間も多く、列車の速度も落ちる。美山から先は支流の羽生川が計石まで並行する。大野市の入口、北大野で2名降りた。もう市街地に入っている。線内最大の駅が越前大野で、当駅では何度か途中下車したこともある。ここで4名降り2名が乗車。2分間停車するので少しだけ撮影ができた。

九頭竜川の富田堰堤と勝原駅

 越前大野からしばらく盆地を走るが、次第に山が近づき、柿ヶ島の手前で九頭竜川を渡る。柿ヶ島でも2名降りた。このあとは九頭竜川の渓谷が楽しめるが、そのぶん速度制限徐行が多い。乗り鉄にはありがたいサービスでもあるが。越美北線昭和35年(1960)12月に開業したときは終着は勝原だった。昔は職員がいた形跡のあるコンクリート造りの駅舎が残る。鉄ちゃんが2名いた。春先のハナモモが有名で、クルマで来る人が多く渋滞が問題になっている。この季節だけでも臨時列車の増発を望みたい。

越前下山駅と終着の九頭竜湖駅

 勝原から先の終着・九頭竜湖までは昭和47年(1972)12月に開業した区間で、途中駅の越前下山をはさんで、荒島トンネル(5251m)と下山トンネル(1915m)の長いトンネルで真っ直ぐに建設されている。この頃には建設技術が進んでいたのもあるが、こういった日本鉄道建設公団の新線が近年消えてゆくのは残念でならない。

九頭竜湖駅でもらえた到着証明書

 終着の九頭竜湖に14時22分着。やっと大野市観光協会が発行する到着証明書がもらえる。簡易委託駅だが、すでに無人化計画もあり、列車の来ない時間帯は窓口もやっておらず記念スタンプもなければ記念入場券もない。かつてはJR西日本の新印があったのだが、心無いコレクターがケチをつけたため、これまで設置されていた簡易委託駅から撤去されたという話を聞いたことがある。にしても記念入場券とか何か販売すればいいのに、併設する『道の駅九頭竜』のほうに力を入れており、1日下り4本、上り5本しかないのだから、もはやどうしようもない状況である。

まいたけ弁当と発車を待つ列車

 家族旅行村へ行く大野市営バスの時刻まで1時間ほどの待ちなので、道の駅にあるそばを食べようと思っていたのだが、営業時間は11~14時。1本前が10時42分着の10時56分着なのだから、これでは列車を利用してアクセスしても折り返しで食べることはできず、店のほうも期待していないのであろう。弁当だけは販売していたので、まいたけ弁当480円を買い求めた。これはリーズナブルで地元の舞茸を使用しており、ヘルシーで舞茸の炊き込みご飯に里芋と漬物が入ったシンプルなものだがおいしい。この先の歩きでは負荷になるので先に食べた。駅弁として扱ってもいいはずだが、なんかもったいない。

下穴馬郵便局風景印と解体された旧和泉村役場

 10分で折り返す福井行きを見送ってもまだ時間がある。駅周辺には和泉郷土資料館や青葉の笛資料館などの施設もあるのだが、すでに訪問済なので見送り、下穴馬郵便局の風景印を求めた。郵便局自体も不思議な設計で周囲が城のように堀でめぐらされている。局内には大野市内の郵便局風景印が展示されていたが、基本風景印は一部を除いて岐阜県内に限定してるので集めることはなさそう。向かいには旧和泉村役場(大野市役所和泉支所)があったが、すでに閉鎖されており入口階段にカラーコーンが立っている。この2カ月後に建物は解体されて更地になった。

駅前のバス乗り場から臨時で交流センターへ移動していた

 大野市営バスの前坂線は1日7本(夏期)あるが、このうち4本は要予約で、しかも1本前は九頭竜湖駅で接続せず、2分前に出てしまう。予約制だと何かと煩わしいし、列車遅延などで乗れなくなるリスクもあるから、予約不要の15時20分発を駅前で待っていたのだが、バスがなぜか来ない。なんと乗り場が臨時で変更になっており、駅裏の和泉地域交流センターになっていたので、慌てて交流センターまで行ったらすでにマイクロバスが停車しており発車ギリギリ。もし乗り遅れたらここまで来て帰れなくなるところだった(つづく)