『愛のコリーダ2000』

本日はGyaoで映画『愛のコリーダ2000』(大島渚監督)を見た。
製作は1976年だが当時は検閲によって本編カットなど大幅編集させられていたが、
のちに監督の意図に近い形で公開されたものである。
いわずと知れた阿部定を主人公にしたもの。
昭和11年(1936)5月18日に男の局部をちょん切って逃走してしまった猟奇事件が
再現されている。もう70年も経つというのに、これほど有名な事件はないだろう。
映画自体は見て唖然。しつこいぐらいのエロシーンばかり。
なんかアダルトを見てるような感じで、あまりのくどさに眠気を催してしまった。
監督としては極限の愛を再現したかったのだろうが、
あの局部切り取りシーンだけで終わってしまう内容は不完全燃焼。
もう少し阿部定の人物像を描いてほしかった気がする。
当社でも以前『世界魔性のヒロイン』を編集したとき、
日本編で阿部定を取り上げたが、阿部定の生年は明治38年(1905)5月28日と
分かっているのに没年が不明である。事件後5年で出所し、
吉井昌子と改名して人知れず結婚して幸せな生活を過ごしていたが、
終戦後に新聞記者が取材で訪れたため、夫に「阿部定」と知れてしまい破局
その後、自分の知名度を利用して旅館や料理屋の女中、水商売の経営者など
転々としたらしい。このへんは持ちつ持たれつで、
利用したり利用されたりだったようだ。
阿部定は昭和46年(1971)年、千葉県市原市の勝山ホテル(現・廃業)で
65歳という高齢にもめげず、若い男に金品を貢いで気をひいていたというが、
その後、置手紙をしたため消息を絶っている。
この本でもうひとり取り上げた有名なヒロインは比嘉和子。
太平洋戦争中にアナタハン島に漂流したのはただ一人の女性・比嘉和子をめぐって、
昭和27年(1954)までに男32人のうち12人が死亡したという事件が起こった。
のち比嘉和子は「アナタハンの女王蜂」と話題になり、
自らが映画の主演となって、のちに阿部定同様、芝居の主役として全国興業したが、
のちに傷害事件の被害者となって故郷の沖縄に戻り、
昭和49年(1974)に亡くなっている。こちらの映画も僕が小さい頃に
田舎の映画館で放映されていたというが、ぜひ見てみたいものだ。
それにしてもあれほど知名度の高い阿部定が、
追跡調査できず、完全にマスコミを煙に巻いてしまうとは……。
噂では老人ホームに入ったといわれるが、どこの老人ホームかもわかっていない。
さすがに現在では100歳を超えるので常識的に生きているとは考えにくいが、
阿部定の最期は誰も知らないのである(知っている人いたら教えてください)


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