大河関連本の終焉

昨日の東京大賞典のアフターから帰宅後、明け方まで費やして
企画案を作成して提出し、著者への疑問点を整理してメール。
これでひと段落ついたので、朝7時20分から放送される
大河ドラマ『江』総集編の第3・4部を半分意識失いながら観てダウン。
起きたのは午後2時を回っており、慌てて銀行へ駆け込む。
そして「鉄道旅のガイド」の2日分更新をすませ、
夜はまた先日録画した『江』総集編の第1・2部を観る。
もちろん、まだやり残している仕事は山ほどあるが、
いったん本年度の仕事おさめとする。
年末はそれなりには慌しくなったが、本年度はついに大河ドラマ関連本の
製作がストップしたため、例年に比すれば楽で、
そんなことをデザイナーさんと話していたのも暮れの打ち合わせの時であった。
いったん途絶えたものの2003年の大河ドラマ武蔵 MUSASHI』から
本年2011年の『江』まで何らかの形で制作に携わってきた。
しかし、来年の大河『平清盛』は、3年続いた版元でもオファーがなく、
他の版元も見つからないため、9年続いた看板作品がとうとうなくなった。
出版不況や強制退去に伴う移転騒動で営業ができないという諸要因もあったが、
もう歴史紀行をうたう『大河関連本』が正直苦しくなっていることは痛感していた。


では過去の大河関連本を振り返り、定価・ドラマ・売行などを五段階で
評価していこうと思う(版元名は割愛)。リンク先は紹介ページ。


2003年『宮本武蔵を旅する』149P 1300円
定価★★★☆☆ ドラマ★☆☆☆☆ 売行★★★☆☆
定価はまぁ妥当だったが、とにかくドラマがひどく、さすがに唯一完走できなかった。
今思えば観続けるべきだったというべきか。制作コストは最低。
翌年も同版元から続いたので、売行は可もなく不可もなくといったところか。


2004年『新選組を旅する』181P 1600円
定価★☆☆☆☆ ドラマ★★★★☆ 売行★☆☆☆☆
定価は版元がつり上げカラーページも減らす横暴さ。
おまけに製作コストは超低すぎて赤字に。
本の内容はしっかり作ったが、やはり歴史素人の版元は話にならなかった。
エモヤンではないが「版元がアホやから本ができへん!」と云いたい。
ドラマの視聴率は低かったが完走したし、個人的にはよかったと思う。


2005年度義経新詳解事典』271P 1350円
定価★★★★☆ ドラマ★★★☆☆ 売行★★★☆☆
この年はいわゆる歴史紀行シリーズではない。
書籍1冊書き下ろしの事典で、いま思えばすごく完成度が高く、
モノクロだったのが大変残念だった作品。
ドラマはタッキー人気で視聴率回復し、個人評価では可もなく不可もなく。
後半には『源義経99の謎と真相』文庫も手がけた。
製作コストは以前の版元に比してずっとマシであったが、
本の売行では重版には届かず、このシリーズもまもなく終焉を迎えた。
いやー『平清盛』に向けて復刻して欲しかった一冊だ。


2006年 歴史群像シリーズ『山内一豊155P 1365円
定価★★★★★ ドラマ★★★★☆ 売行★★★☆☆
この年は1冊製作をついにしなかった。
しかし、やはり歴史群像シリーズはクオリティが高い。
売行は重版に届かなかったときくが、部数も相当刷ったのだろう。
ドラマは20%を回復。かなり笑えた内容であったと思うが、これ以降ひどくなる。


2007年『風林火山をゆく』127P 980円
定価★★★★★ ドラマ★★★☆☆ 売行★★★★☆
印刷所からの紹介で歴史紀行本が3年ぶりに復活。
製作コストは普通で、定価も妥当な線だったと思う。
ドラマはこの年から旅じゃWEBで批評を始めているが、
ドラマ内容は結構苦しくなってきた感は否めない。
初めて重版かかったが、途中で版元自体が倒産したので最終的な評価は出せず。


2008年『天璋院篤姫と幕末を旅する』127P 980円
定価★★★★★ ドラマ★★★★★ 売行★★★★★
製作コストも定価もよかった感じ。しかし、個人的な事情もあって
著者を立てて、編集人も伏せざるを得なかった。
ドラマは序盤苦しんだが、尻上がりに視聴率を伸ばす。
しかし、これがのちの『江』での失敗につながるとは脚本家も
この時点では考えていなかったであろう。
重版までかかっているのに、序盤の売行をみられ、
翌年はこの版元での製作ストップ。
でも企画しっかりパクって別の会社から出しているんだからひどい話。


2009年『天地人 直江兼続』143P 1600円
定価★★☆☆☆ ドラマ★★☆☆☆ 売行★★★★★
この年から歴史紀行だけでなく、総合的な本に内容を変更。
定価は高すぎる感はあったが、重版もかかり売行もよかったらしい。
しかし、いわゆるこの年がピークだったと考えている。
ドラマ的には内容がひどくても視聴率がとれたこともあって、
これが翌年からの大河苦戦にもつながってくる。



2010年『坂本龍馬創世伝』143P 1600円
定価★★☆☆☆ ドラマ★★★☆☆ 売行★★☆☆☆
定価は引き続きであったが、昨年の評価もあって、
取材も全国的に回って一番充実した年だったと思う。
しかし『○○人』という黒船が来襲し、価格破壊を敢行。
この年、大河関連本乱発もあって売行は大苦戦。
ドラマも第2部までよかったが、あとは低迷してゆく。


2011年『江〜三代将軍家光の母・崇源院』127P 1365円
定価★★★☆☆ ドラマ★★☆☆☆ 売行★★☆☆☆
版元もさすがに定価の高さを悟り、製作コストとページを減らし、
定価を下げてみたものの、やはり売行苦戦で終止符が打たれる。
ドラマはあの『篤姫』で天狗になった代筆脚本家のファンタジーで、
どうせならアンネット江に徹したほうがおもしろかったとは思う。
篤姫』放送前に結婚した主人公の宮崎あおいも今年ついに離婚。
あのときは放送前に結婚したのでドラマが失敗すると危惧されたが結果オーライ。
しかし、あの脚本家と運命を供にした感がある。じゅりっぺもそうか。


ということで9冊とスペシャルドラマ坂の上の雲 歴史紀行』
製作したのでちょうど区切りのよい10冊で終わったということか。
以前、名馬関連本を製作していたY氏も10年の区切りで止めたが、
やはり刻一刻と変化する情勢には太刀打ちできなくなっていると思う。
一応、本年も京都・神戸・下関など『平清盛』関連の先行取材もしていたが、
さすがに従来の歴史紀行では苦しいことは分かりきっていた。
歴史紀行本はあくまでビジュアルで楽しむもので、
地図がしっかりフォローできない限り、ガイドブックにはなり得ないからだ。
これからますますネット中心の情報社会になっていくであろうが、
これに対する技術も投資も追いついていけなくなっているのが現状だ。
これまで大河ドラマを完走し批評してきたのは、
当社製作関連本の宣伝の一環であったのだが、
アフリエイトで買ってくれる本など年に数冊で時間的に考えれば
コンビニのレジ打のほうがずっとマシな単価になってしまう。
電子書籍が一部を除いて売れていないことをみても
ネット情報も一歩間違えれば悲惨な結果を招いてしまうということだ。
ということで来年の大河『平清盛』は数回は観るであろうが、
もうあの予告編も観ても魅力ある内容には思えなくなっている。
再来年の大河『八重の桜』も然りである。
この情報化社会でいかに仕事をこなし、会社をうまく運営していけるか、
そういう意味では試練の2012年になるかとは思う。


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