『江』最終回「希望」

これほど最後まで観続けるのが苦痛に感じた大河ドラマもようやく最終回。
最終回に先立ち2011年1月1日〜3月16日までの日記をカテゴリー整理しましたので、
『江』全話の批評がまとめて読めるようにしておきました。
まずは最後の先週のおさらいから始めます。
視聴率は15.6%で前回と変動なしでした。
もうここまで15%台で推移してしまうと、平均視聴率も悲惨な結果になりそうで、
追い討ちをかけるように、皮肉にも世間は大阪ダブル選挙のほうに関心が集まっており、
せっかくの73分拡大もかえって裏目に出てしまった感は否めません。


オープニングでは、秀忠を補佐した本多正信が死去。
まだ元和2年(1616)で、ここから江が死去する寛永3年(1626)まで
10年を一気に進めようとするドラマの乱雑さ。
震災で1回分短くなってしまったことはありましょうが、
余計なところで引っ張りすぎた、あの脚本家の構成力のなさを非難すべきでしょう。
その本多正信の遺言が「隠し事」。えっ、ここで幸松(保科正之)を出すのですか?
一方の千姫も江に説得されて本多忠刻と再婚します。
ここでは触れていませんが忠刻は江と同年に死去しており、
千姫はその後、江戸で40年も未亡人として余生を過ごします。薄幸ですね。
そして幸松ですが、あれだけ江を恐れていた秀忠が
本当に江の存命中に知らせたのでしょうか?
ドラマでは福が初(常高院)にそれを打ち明けるところ
乳母と江にも聞こえているという設定。で当然のことながら江は怒りますが、
ここに最初の夫・佐治一成が尋ねてきて、江はこのことを話し、
「なんでも正面から受け止め、心の命じるままに」と諭され、
江は幸松を呼び寄せます。そして竹千代・国松と仲良く遊ぶ姿をみて、
正室も側室も隔てなく暮らす大奥を創設。
そして元和6年(1620)五女・和子を後水尾天皇へ入内、
本多正純松平忠直の改易と矢継ぎ早に進み、
秀忠の武断政治を非難し、関係が悪化する江に対し、
すでに継嗣となった家光が「父上を信じてください」と云って関係を修復させます。
元和9年(1623)についに家光が三代将軍に就任。
福が大奥の取り締まりを命じられ、鷹司孝子が正室として輿入れします。
結局、福(春日局)との対立は、最初は見られたものの、
ほとんど平和裏にことが進み、のちの忠長の悲劇などにもまったくふれられませんでした。
翌年の寛永元年(1624)にはおね(高台院)が死去。
最後まで高台院を登場させてくれたのはよいのですが、
結局、最後の最後まで江は歳を取らないような感じで、
「泰平の世を望むなら己の心が平安で、皆がそうなれば争いはなくなる」
と平和ボケな台詞を吐かせたのは、完全な脚本家の思考でしょう。
原子炉の真上に立って「パワースポットよ」原発を賞賛する
金欲まみれのあんたにそんなこと云われたくねぇえええええ〜。
で、最後まで成長しなかった江は秀忠と二人で馬駆けに出かけます。
そこでお市の亡霊が併せ馬で駆けて行っておしまい。
最期は描かれませんでしたが、54歳という高齢のため落馬したか、
護衛もつけずに野に出かけたため、暴漢に襲われて死んだということにしておきましょう(完)


史跡紀行では江の墓がある東京都港区の増上寺、江の霊廟の一部が移築された
神奈川県鎌倉市建長寺、初の墓がある福井県小浜市の常高寺、
江の肖像画が伝わる京都市東山区の養源院などが紹介されました。
鎌倉の建長寺は未訪ですが、養源院は昨年4月に訪れました。
今回は増上寺の秀忠&江の合祀墓および増上寺のスタンプ、
養源院の写真をUPしてお別れしたいと思います。

なお、増上寺の徳川家霊廟は大河ドラマ『江〜姫たちの戦国』の放映にちなみ、
平成24年(2012)1月末日(年末は休み)まで特別拝観が実施されています。
拝観料は500円(記念品付)で、公開時間は10〜16時です。
これを逃すと通常は非公開で、4月上旬の御忌大会などの特別な日しか公開されませんので、
この機会に秀忠&江夫妻が合祀された墓をぜひお参りされてはどうでしょうか。


【あとがきにかえて】
最終回の視聴率は19.1%で前回比3.5%増。
さすがに20%にはおよばなかったものの、大阪ダブル選挙などを考慮すれば、
むしろあの内容にしては健闘したともいえましょう。
平均視聴率は17.7%で昨年の『龍馬伝』が18.7%にもおよばず、
2004年『新選組!』17.4%をわずかに上回っただけで、
記念すべき50作目の大河ドラマとしては大失敗に終わりました。
4年前の『篤姫』24.5%を記録した脚本家でしたが、
今回の作品はその4年前とは打って変わっての駄作で、
やはり代筆していたお兄さんの存在が大きかったのでしょう。
初めて大河で主役をはったじゅりっぺにも可哀想な結末を迎えてしまいました。
ひどい脚本でも無理に頑張って演じた感はありますが、
それが子ども時代の道化役、その後は眉間に皺を寄せる怖い顔になってしまい、
渋い脇役に囲まれてこれまた浮いた存在になってしまったと思います。
一概に視聴率がよいからいい作品だったとはいえず、
三谷幸喜の『新選組!』は個人的には好きでしたし、
歴女ブームに便乗した『天地人』はあの内容でも21.4%を記録していますからね。
来年の『平清盛』はもう予告編観ただけで『武蔵 MUSASHI』を思い出し萎えてしまいました。
元々史料が少ないだけに、創作部分が多くなりそうですが、
もうその創作大河には拒絶反応を起こしています。
再来年の『八重の桜』にしても、創作部分が多く期待していません。
NHKは『JIN』で成功をおさめた綾瀬はるかを起用しますが、
2006年の『のだめ』でブレイクしたじゅりっぺを起用し、
2008年の『篤姫』でブレイクしたあの脚本家を起用しても失敗に終わっているのですから、
「昔、視聴率がとれたからと云って、数年後に維持できるとは限らない」
という消長の早い世間の動向を見極めていません。
逆に期待が大きければ大きいほどガッカリ感が高くなってしまうものです。
引き続き『坂の上の雲』第三部は観たいと思いますが、
もうさすがに来年の『平清盛』は、もういいやという感じです。
源平合戦など重要な部分は観ようと思いますが、完走はしません。
予めご了承いただくと同時に、この件は別機会に書きたいと思います。


今回はK先生も他の方々も途中で大河ドラマ批評に萎えて挫折しまい、
自分自身も完走は相当辛かったのですが、同じく最後まで完走し参考にもなった
おすすめのブログをひとつだけ紹介させていただきます。

劉公嗣さん『雑記帳』


ということで、最後に第1回でも紹介した当社製作本を紹介して締めくくります。

『江〜三代将軍家光の母・崇源院』(メディアボーイ1365円 B5判 購入はコチラ
江(崇源院)の生涯を史跡紀行で編年体で追跡。
第一部の信長の章では長浜、清洲・小牧、岐阜、津、安土。
第二部の秀吉の章では福井、常滑、京都。
第三部の家康の章では滋賀県広域、大坂、小浜、江戸を徹底取材。
そして第四部では総論として桐野作人先生による三英傑と三姉妹を結ぶ運命の糸を特集。
屏風絵にみる合戦ダイジェストや喜多氏による姫様原色図鑑や
戦国姫かわら版、関連史跡・人物事典など読み応えのある一冊です。


→詳細ページはこちらです。


値段を少し下げて挑戦しましたが、案の定、売れ行きでは苦戦しました。
今の出版事情や流通ルートをみても、もはや救う手立てはありません。
来年の大河『平清盛』のMOOKは製作しないため、
もしかしたら当社製作最後の大河本になるかもしれません。
前作『坂本龍馬創世伝』同様、低予算に苦しみながらも
中身はそれなりに頑張ったと自負しておりますので、
品切になる前にぜひお買い求めいただければ幸いです。


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