下在所~上在所は運賃110円也。もう陽も落ちて車窓を楽しむこともできず、周囲の街路灯もないので、暗闇で不安にかられつつ『となりのトトロ』のサツキとメイのような心境でバスを待つ。少し遅れて遠方からねこバスの如くヘッドライトを照らして白鳥交通バス石徹白線のマイクロバスがやって来た。他に1名が乗っていたが、西在所で降りたので、終点の上在所までは空気輸送阻止となり、上在所ではすぐに折り返すので写真だけ撮って再び折り返す。この上在所から乗ってきた旅人が1名いた。近くの白山中居神社へ来たのであろうか。残念ながらすでに陽も落ちて暗くなっていたが、陽の長い6~7月なら、まだかろうじて周辺も明るく、中居神社などを入れて撮影もできたのでないだろうか。
上在所は18時30分発で北濃駅までは運賃310円也。そういえばデマンドバス石徹白線を全線乗り通すのも初めてであった。以前に阿弥陀ヶ滝まで行ったことはあるが。このバスは1日3往復だが、平日と土曜のみの運行で日曜、祝日は運転されず、間の2便は乗車の1時間前までに予約が必要となる。僕の乗ったのは3便だから予約なしで乗れるが、上在所から乗ってきた方は2便を予約して石徹白を旅したのかもしれない。県道314号石徹白前谷線はクルマでは何度も通っている。分水嶺である桧峠(標高956m)のパノラマもすばらしいが、すでに暗闇のなか鹿に遭遇して急停車もあった。7月下旬ならこの付近も確認できたのではないだろうか。
北濃駅19時5分着で、もう一人の旅人もここで下車して長良川鉄道に乗り換え。すでに駅には列車が到着しており、21分発だから接続はよい。ラッキーなことにセミクロスシートの300形だったから、ボックス席も確保でき、最後にとっておいたアルコールで祝杯をあげた。
美濃白鳥で女学生3名が乗車したが、当駅で7分停車するので運転士に断って列車を撮影。さらに郡上大和でも列車交換で2分ほど停車したので記録用に撮影している。
20時14分に郡上八幡に到着。いつもフリーきっぷで終電まで乗り通すことを知ってた運転士さんは「ここで降りるんですか?」と不思議そうに問いかけたが、今回は正規運賃での乗車なので880円を運賃箱に入れて未成線含む越美線の旅は終わった(完)。
あとがき
1日で行って来れることを実践してみたわけだが、あくまで上記のプランは令和3年(2021)9月13日に実践したものなので、もし同行程で行かれる方は時刻やバス運行日を予め確認しておいてほしい。それに9月でもかなり陽が落ちているので、やはり陽の長い6~7月がおすすめで、土砂崩れのリスクもあるから梅雨や雨天は避けたいし、冬場は通行止になる区間もあるのでやはり避けたい。
天候がよければよいツアーコースになるが、なにぶん熊との遭遇リスクはあるので熊除け鈴は持参したほうがよいだろう。今回痛感したが、道路にも出没するマムシにも要注意だ。また、家族旅行村~下在所の区間は上り勾配なので、むしろ下りになる逆回りは可能かどうかも調べてみたのだが、これだと白鳥交通バス石徹白線の1便が早すぎて美濃白鳥か北濃で1泊しなくてならず、予約制の2便ではさすがに長良川鉄道沿線まで戻って来れない。
食糧は予め用意しておいてもよいが、米原・敦賀・九頭竜湖で調達できる。とくに九頭竜湖駅は道の駅とコンビニのファミリーマートが併設されているから、徒歩区間の前に水分などは補給しておきたい。
最初にも書いたが運賃は上在所を経由しなければ計6740円(上在所経由ならプラス110円)であるが、やはり美濃太田~九頭竜湖のJR運賃4070円の占める割合が高く、それなら「青春18」1回分2410円を利用したほうが1660円の節約になる。筆者も「青春18」利用を望んでいたが、5回分の消化が困難で断念した経緯がある。
以上のように長良川鉄道沿線や日帰り可能な地区に住む方ならJRの高山本線・東海道本線・北陸本線・越美北線を乗り継いで日帰り旅行が楽しめる。JR線226.7㎞は高山本線全線(225.8㎞)とほぼ同距離だし、これに長良川鉄道72.1㎞を足せば鉄道298.8㎞、上在所を寄らない路線バス計21.5㎞、徒歩8.1㎞で計328.4㎞の旅になる。未成区間を含む越美線では総延長154.2㎞になる。
これは当初の敷設計画であり、現在は中部縦貫自動車道の建設が進む、かつてのJRバス大野線のルートなら美濃白鳥~九頭竜湖間は国道158号経由で29.4㎞、越美線の全長は148㎞となり、少し短くなる。
中部縦貫自動車道が全通すれば越美北線越前大野~九頭竜湖間は廃止が危惧されているが、地図で示したように、この未成区間を含む越前大野~九頭竜湖~美濃白鳥~北濃をDMVで運行すれば、岐阜県と福井県の交流ももっと活発になるのではないか。本当は現在徒歩区間になっている家族旅行村~下在所間まで導入できるとよいのだが、現在の道路状況では困難に感じられる。ただ、このまま座して廃止を待つよりは少しでも存続への道が模索できればと思う。
令和6年(2024)3月16日(土)の北陸新幹線敦賀延伸に伴い、敦賀~金沢間が第三セクターに移管されて、福井県内はハピラインふくいになるが、通過特例として敦賀~越前花堂間は「青春18」で利用できると発表されている。そうすればこのツアーは5080円の運賃で実践可能となる。もちろん、第三セクター移管後にダイヤがうまく接続されるかどうかの問題点もあるが、まだ家族旅行村~下在所間約8.1㎞を走破できる体力があるなら、7月下旬に再チャレンジしてみてもよいと思っている(2024年1月24日追記)。